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『マキアヴェッリ語録』 塩野七生 (08)





『マキアヴェッリ語録』 (08)





『マキアヴェッリ語録』 塩野七生 新潮文庫
平成4年11月25日 発行


目次
第1部 君主編
第2部 国家編
第3部 人間編






マキアヴェッリ(日本ではマキャベリと表現されることが多い)
は『君主論』の著者として知られ、「マキャベリズム」が
人口に膾炙しています。


その思想を端的に表現する言葉は、
「目的は手段を正当化する」
です。


目的のためならどんな手段を講じてもかまわない、と解する
ことが多いですね。


実は、私もこの書を読むまではそのように解釈していました。
言葉を文脈の中で解釈せず、言葉が独り歩きすることの怖さは、
風説の流布でも経験することです。


福島第一原発事故以後、周辺にお住まいの方々は風説の流布
に悩まされ続けています。拡散した誤情報はさらに誤情報を加え、
拡大していきます。容易に訂正されることはありません。



話しを戻しますと、マキアヴェッリの実像はどのようなもので
あったのか、そして「目的は手段を正当化する」と言っている
ことの真意は何だったのか、を知りたいと思いました。


先入観を取り払い、大前研一さんが言う、「オールクリア
(電卓のAC)」にしてマキアヴェッリの説くことに耳を傾ける
ことにしました。


マキアヴェッリは、1469年5月3日にイタリアのフィレンツェで
生まれ、1527年6月21日に没しています。15世紀から16世紀
にかけて活躍した思想家です。500年位前の人です。


ニッコロ・マキャヴェッリの肖像画

ニッコロ・マキャヴェッリの肖像画 Wikipedia から
 


塩野七生(しおの・ななみ)さんは、「まえがき」に代えて
「読者に」で次のように記しています。塩野さんが解説
ではなく、また要約でもなく、「抜粋」にした理由を説明
しています。


尚、10ページ以上にわたる説明からポイントとなる言葉を
「抜粋」しました。




 この『マキアヴェッリ語録』は、マキアヴェッリの思想の

 要約ではありません。抜粋です。

 なぜ、私が、完訳ではなく、かといって要約でもなく、

 ましてや解説でもない、抜粋という手段を選んだのかを

 御説明したいと思います。

 第一の理由は、次のことです。

 彼が、作品を遺したということです。


 マキアヴェッリにとって、書くということは、生の証[あか]し、

 であったのです。


 マキアヴェッリは、単なる素材ではない。作品を遺した

 思想家です。つまり、彼にとっての「生の証し」は、今日

 まで残り、しかもただ残っただけではなく、古典という、

 現代でも価値をもちつづけているとされる作品の作者でも

 あるのです。生涯を追うだけで済まされては、当の彼自身

 からして、釈然としないにちがいありません。


 抜粋という方法を選んだのには、「紆曲」どころではない

 マキアヴェッリの文体が与えてくれる快感も、味わって

 ほしいという私の願いもあるのです。そして、エッセンスの

 抜粋ならば、「証例冗漫」とだけは、絶対に言われない

 でしょう。


 しかし、彼の「生の声」をお聴かせすることに成功した

 としても、それだけでは、私の目的は完全に達成された

 とはいえないのです。マキアヴェッリ自身、実際に役に立つ

 ものを書くのが自分の目的だ、と言っています。 

 

  (前掲書 「読者に」から PP.3-5、14)




マキアヴェッリの名言をご覧ください。


第1部 君主編



 次のことは明言しておきたい。

 すなわち、危険というものは、それがいまだ芽であるうちに

 正確に実体を把握[はあく]することは、言うはやさしいが、

 行うとなると大変にむずかしいということである。

 それゆえはじめのうちは、あわてて対策に走るよりもじっくり

 と時間かせぎをするほうをすすめたい。

 なぜなら、時間かせぎをしているうちに、もしかしたら自然に

 消滅するかもしれないし、でなければ少なくとも、危険の増大

 をずっと後に引きのばすことは、可能かもしれないからである。

 いずれの場合でも、君主ははっきり眼[め]を見開いている

 必要がある。

 情勢分析を誤ってはならないし、対策の選択を誤ることも

 許されないし、対策実施のときも誤ってはならないのだ。

 植木に水をやりすぎて枯らしてしまうようなことは、あってはなら

 ないのである。

 しかし、こちら側の準備が万端と思うやいなや、迷うことなく

 断固として反撃に打って出るべきである。

 反対に、その自信がないときは、まだしばらくは事の成行きに

 まかせるほうが良策と思う。


                    ―― 『政略論』 ――

                              (PP.104-105)

         (022-1-0-000-499)
 



 


 君主たる者、もしも偉大なことを為したいと思うならば、

 人をたぶらかす技[わざ]、つまり権謀術数を習得する必要が

 ある。


 ローマもまた、他にライヴァルがいないほどに強大になるまで

 は、情況の変化に合わせて、または自らすすんで、有効と

 思われるかぎりのあらゆる術策を活用したものであった。

  
                    ―― 『政略論』 ――

                              (P.106)

          (023-1-0-000-500)
 






 ローマは、建国の当初とていまだ弱体な国家であった時代

 から、権謀術数の必要を知っていた。

 まして小さく弱い現状から少しでも上昇しようと思う者に

 とっては、このことは必要欠くべからざる配慮と思う。

 ただ、その活用に際しては、ローマ人がしたように、

 可能なかぎり水面下でなされるべきであろう。

 そうすれば、ローマ人が成功したように、このような汚い

 ことをやったあげくに浴びる非難から、まぬがれることが

 できるからである。


                    ―― 『政略論』 ――

                              (P.107)
                              
          (024-1-0-000-501)
 








ポイント

権謀術数を修得する必要がある、ということです。


ここで、権謀術数とは何かについて、確認しておきましょう。


 権謀術数(けんぼうじゅっすう)とは、主に社会や組織などの

 集団において物事を利己的な方向へ導き、自身の地位や

 評価を高めるために取られる手段や技法、およびそれが

 用いられるさまを表す総称。
 

  (権謀術数 Wikipedia から)


何か、汚い、悪いイメージしか浮かびませんね。
ですが、君主(リーダー)つまり、上に立つ者は
きれい事だけでは、支配することはできない、
ということです。


常にそうだということではありませんが、
正攻法だけでは勝負に勝てません。


時には、邪道と思われても、奇襲作戦を採ること
も考えなくてはなりません。


これには2つの意味がある、と考えています。
1つ目は、相手を撹乱したり、だまし討ちをする
ためです。


もう1つは、味方に、いつも同じ作戦ではマンネリ化
するため、これを防ぐためです。




キーセンテンス

情勢分析を誤ってはならないし、対策の選択を誤ることも
許されないし、対策実施のときも誤ってはならないのだ。



いかにして確度の高い情報を多く集め、集めた情報を
的確に分析するかにかかっている、と言っても過言では
ありません。


「孫子の兵法」にも、同様なことが書かれていますね。


「彼を知り己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」
(『謀攻篇』)







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